~「知的な肥満」を解消し、人生を循環させるための読書論~
私たちは、「知識」というものを、どこか「金銀財宝」のようなものだと思い込んでいないでしょうか。
学べば学ぶほど、蔵の中に宝が積み上がり、自分という人間の資産価値が上がっていく。だから、片っ端から本を読み、情報を詰め込み、少しでも多くの知識を所有しようとする。
しかし、もしあなたが今、たくさんの本を読んでいるにもかかわらず、どこかスッキリせず、ビジネス人生が停滞しているように感じているのなら、その「知識=財産」という前提を疑う時が来ているのかもしれません。
私の考えでは、知識は金庫にしまっておく「財産」ではありません。
知識とは、あなたの体を動かし、思考を巡らせるための「食事」そのものです。
食べてばかりで動かなければ、体はどうなるでしょうか?
あるいは、息を吸い続けて、吐くことを忘れたら、人間はどうなってしまうでしょうか?
今回は、私たちが陥りがちな「インプット過多」の病と、それを解消して知識を血肉に変えるための「知的な代謝」について考えてみたいと思います。
これを読んでいただければ、情報化社会の中、なぜあなたの周りにいる情報を沢山持っているあの人が成功していないか、きっとわかるでしょう。
1. 私たちは「知的な肥満」になっていないか
「本を読む時間がない」という悩みと同じくらい、「読んだ内容を覚えていない」「読んでも何かが変わった気がしない」という悩みも深く切実です。
多くの勉強熱心な人々は、まるでわんこそばを食べるかのように次々と新しい情報を脳に流し込みます。ビジネス書、自己啓発、ニュース、SNS……。
しかし、ここで冷静になって考えてみてください。私たちは、取り込んだその膨大なカロリー(情報)を、どこで消費しているのでしょうか?
食べ物は、摂取した後、運動や生命活動によってエネルギーとして消費されなければ、脂肪として体内に蓄積されます。
知識も全く同じです。
得た知識を行動や思考の変化として「消費(アウトプット)」しなければ、それは単なる「贅肉」として頭の中に溜まっていきます。
私はこれを「知的な肥満」と呼んでいます。
頭でっかちになり、理屈ばかりが達者になり、評論家のように斜に構えてしまう。
「その話は知っている」「その理論は古い」と、知識のラベルだけで物事を判断し、自分自身は一歩も動かない。
これは、知識という高カロリーな食事を摂り続け、全く運動をしていない状態と同じです。体が重くて動けなくなるのは当然です。
「知識は力なり」という有名な言葉がありますが、正確には「使われた知識だけが力になる」のです。
使われない知識は、力になるどころか、あなたのフットワークを重くする「重り」になりかねません。
2. ヨガの教えに学ぶ「呼吸」の真理
では、どうすればこの「重さ」を取り除けるのでしょうか。
そのヒントは、古代から続くヨガの呼吸法にあります。(最近ヨガについて勉強をし、共通点を発見したのでシェアさせてください。)
ヨガには、呼吸について非常に重要な教えがあります。
「深く吸いたいと願うなら、まずは深く吐くことに集中しなさい」
呼吸において、主役は「吸う(インプット)」ことではなく、「吐く(アウトプット)」ことです。肺の中にある古い空気をすべて吐き出し、真空に近い状態を作るからこそ、新鮮な酸素が自然と、そして深く入ってくるのです。
これは、私たちの学びのサイクルと完全に重なります。
私たちは焦るあまり、息を吸うこと(本を読むこと)ばかりに必死になります。
「もっと学ばなきゃ」「遅れてしまう」と、パンパンに膨らんだ肺に、さらに空気を押し込もうとします。これでは苦しくなるだけです。新しい空気など入る余地はありません。
もし今、あなたが読書に行き詰まりを感じているなら、すべきことは「新しい本を買うこと」ではありません。
「本を閉じて、吐き出すこと」です。
・読んだ内容を、友人に話してみる。
・ノートに自分の言葉で書き直してみる。
・本に書いてあった小さなアドバイスを、一つだけ今日の仕事で試してみる。
そうやって自分の中にあるものを「外に出す」ことで、心の中に空白が生まれます。「なるほど、やってみたらここは上手くいかなかった」「人に話したら、もっと深い疑問が湧いてきた」――その空白こそが、次の「知りたい」という健全な欲求(食欲・吸気)を呼び起こすのです。
「吐くから、吸える」。
このシンプルなサイクルを取り戻すだけで、知識の巡りは劇的に良くなります。
3. 「あなたは、あなたが食べたものでできている」
英語圏には “You are what you eat.” (あなたは、あなたが食べたものでできている)という言葉があります。
私たちの体は、食べたものの栄養素で構成されています。ジャンクフードばかり食べていれば、体も肌も荒れていくでしょう。
これは「知的な食事」においても、恐ろしいほど当てはまります。
もしあなたが、ネガティブなゴシップ記事や、誰かの悪口、不安を煽るだけのニュース(情報のジャンクフード)ばかりを毎日摂取していたら、どうなるでしょうか。あなたの思考回路、発する言葉、まとう雰囲気は、確実にその「食べたもの」の影響を受け、荒んでいきます。
逆に、時を超えて読み継がれる古典や、著者が魂を込めて書いた良書、美しい言葉で綴られたエッセイ(栄養価の高い食事)を日常的に摂取している人はどうでしょう。
その人の口から出る言葉、判断の基準、ふとした時の振る舞いには、摂取した「良質な知性」が滲み出ます。
ここで重要なのは、「どれだけ良いものを入れて、どれだけ綺麗に外に出すか」という点です。
最高級の食材を食べても、消化不良を起こしてしまえば意味がありません。
良い本を読んだら、それを自分の中でよく咀嚼(そしゃく)し、消化し、自分の血肉に変える時間が必要です。
そして、その結果として出てくる「アウトプット」は、単なる情報の受け売りではなく、あなたというフィルターを通した「知恵」や「優しさ」、「的確な行動」として表現されるはずです。
・美しい言葉を読めば、あなたの言葉遣いが美しくなる。
・論理的な思考に触れれば、あなたの決断がスムーズになる。
・勇気ある物語を読めば、あなたの背筋が伸びる。
「綺麗に外に出す」とは、得た知識をそのままオウム返しにすることではありません。
本から得た栄養分で、あなた自身の行動や言葉を美しくデザインし直すことなのです。
4. 知の「便秘」を解消するアクションプラン
では、具体的にどうすれば「知的な代謝」を上げることができるでしょうか。
いきなり「本を書く」「ブログを始める」といった大それたことをする必要はありません。代謝を良くするための、日常的な「軽い運動」から始めましょう。
① 「1インプット・1アウトプット」の原則
「1冊読んだら、1つ行動を変える」と決めてみてください。
本を読み終わった時、「いい本だった」で終わらせず、「で、明日から何をする?」と自分に問いかけるのです。
「朝5分だけ早く起きる」「部下にありがとうと言う」「会議の資料のフォントを変える」。どんな些細なことでも構いません。知識を現実に「変換」する癖をつけるのです。
② 誰かに「お裾分け」をする
美味しいレストランを見つけたら、誰かに教えたくなるように、面白い本を見つけたら、その感動を誰かに話してみてください。
「この本にこう書いてあって、すごく救われたんだ」
誰かに話すという行為は、脳内で情報の再編集を行う高度なアウトプットです。相手が喜んでくれれば、知識は「貢献」に変わります。
どんどん「言葉を奢って」あげてください。
③ 読み終わらなくても「吐き出す」
本は最後まで読まなくてはいけないというルールはありません。読んでいてハッとする言葉に出会ったら、その瞬間に本を閉じ、思考を巡らせたり、メモを取ったりしてください。
それは、美味しい料理を一口食べて、目を閉じて味わうのと同じです。味わいもしないで次の一口を詰め込む必要はありません。
知識は、流れる水のように
古来より、水は淀むと腐ると言われています。清らかな水とは、常に流れている水のことです。
知識もまた、流れの中にしか存在しません。
本からあなたの頭へ、頭から行動へ、行動から現実世界へ。
このダイナミックな流れの中に身を置くことこそが、本当の意味での「教養」であり「読書」なのです。
もう、知識を貯め込むだけはやめにしましょう。
金庫の鍵を開け、蔵の中に眠っている言葉たちを、外の世界へ解き放つのです。
今日、あなたが手にする一冊は、コレクションするためのメダルではありません。
今日を生き抜き、明日を変えるための、温かくて栄養たっぷりの「食事」なのです。
さあ、深く息を吐いて。
準備ができたら、新しいページを開き、存分に味わいましょう。
そしてまた、そのエネルギーを美しい行動に変えて、世界に還元していきましょう。
それこそが、本を読むということであり、生きるということと同義です。
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