1. 書評:永遠のベンチャー企業であれ
■ 「成功した」と考えた者から、消えていく
ユニクロ(ファーストリテイリング)は、日本を代表する巨大企業です。しかし、創業者である柳井正氏は、本書の中で驚くほど危機感を露わにしています。
「成功した人間は、成功したと考えた瞬間に、成長が止まる」
タイトルにある『成功は一日で捨て去れ』とは、比喩ではありません。
昨日までの勝利の方程式は、今日にはもう陳腐化している。だからこそ、過去の栄光(成功)にしがみつく者は、変化の激しいこの世界から真っ先に消えていく運命にある。
この冷徹なまでの現実認識こそが、柳井氏の経営の根幹です。
■ 「再ベンチャー化」と「第二創業」
企業が大きくなると、どうしても守りに入り、形式主義や事なかれ主義といった「大企業病」が蔓延します。柳井氏はこれを最も嫌いました。
そこで提唱されているのが「再ベンチャー化」「第二創業」という考え方です。
どれだけ組織が巨大になっても、創業時のようなハングリー精神とスピード感を失ってはいけない。安定を求めるサラリーマン集団ではなく、一人ひとりが自立した思考で戦う「ベンチャー企業」であれ。
この思想が徹底されているからこそ、ユニクロは世界企業になってもなお、恐ろしいほどの速度で変化し続けているのです。
■ 思考停止を許さない「即断、即決、即実行」
では、具体的にどう動くべきか。柳井氏が社員に求める行動指針は極めてシンプルかつ強烈です。
「即断、即決、即実行」
考えているだけでは、何もしていないのと同じです。
グローバル競争において、スピードは最大の付加価値です。迷っている暇があれば決断し、実行し、失敗したらすぐに修正する。
このサイクルを高速で回せる人間(組織)だけが、生き残る資格を持ちます。
2. 店主の道案内ノート
本書を読み始め、まず最初に印象に残った言葉は「成功という言葉を取り違えている経営者が多い」というものでした。
柳井さんほどの人ですら「成功したとは思えない」と考えており、それは“気持ちの上で”というよりは本音でそう考えていると感じました。
私たちは、ちょっとしたことで「成功した」と思ってしまいます。
売上が1000万円になった。数店舗展開した。大きな契約が取れた。
などなど、、少なからず「成功した」と思った人は多いでしょう。それを一言「錯覚」という言葉でバッサリと1ページ目から斬られます。
しかし、過去を捨てることというのはなかなか難しく、本書でも例として他企業から転職してユニクロに入った幹部の方たちの話が出てきますが、前の企業で上手くいったやり方を変えない人が多いのだと。
私たちでも経験したことがあるのではないでしょうか。前の職場、前の環境で上手くいったことに自信を持って次の環境で使うということが。
しかし、ほとんどの場合は、そこまで上手くいかないことが多いでしょう。やはり、時代や環境は変化しており、大事なのは、その「上手くいったことをそのまま再現する」ことではなく、「上手くいったときの考えや思い、思考法を再現する」ことなのでしょう。
私自身も常にアップデートしていかないとと、戒められました。これは経営者にとってはある種“自己啓発書”となる本なのかもしれません。
3. まとめ
本書は、あなたを慰めてくれる優しい本ではありません。
現状に満足し、安定を求めようとする心に冷や水を浴びせ、「お前はまだ戦えるか?」と問いかけてくる一冊です。
内容は経営を知っている方向けになるかもしれませんが、現在40代以上のユニクロのフリースブームや「ユニバレ」といった言葉を知っている世代には、当時の状況を踏まえて読める面白い本だと思います。
「まだまだ頑張れ!」と言われているように感じたなら、この本はあなたの仕事を次のステージへと押し上げる、最強の起爆剤となるはずです。
